性器ヘルペスは、感染力の強い単純ヘルペスウイルスが原因で発症しますが、妊娠中は胎児の生育をサポートする為に特別なホルモンバランスになっているので平常時よりも免疫力が低く、性器ヘルペスに感染し易くなるだけで無く、再発もしやすくなっています。
性器ヘルペスは、自覚症状が無く感染に気付かない事の多い疾患ですが、初めて発症する場合は激しい症状が発現する事もあり、妊婦と胎児の両方が命の危険にさらされる危険性があるので特に注意する必要があります。

性器ヘルペスは、性器や性器周辺に水疱や潰瘍が発症し、適切な治療が遅れると子宮頸管から子宮を経て卵巣や腹膜にウイルスが到達しますが、再発時の場合は妊婦に抗体が形成されているので胎児への感染の危険性は0%~3%程度と比較的低くなっています。
初めて発症する妊婦の場合は、母体に抗体が形成されていない為、胎児にも抗体が無く再発時に比べて感染の危険性が30%~60%と非常に高くなっています。

性器ヘルペスは、妊娠29週目までの発症ならば出産までに充分な治療を受け完治出来る事もあり、胎児への感染の危険性が非常に低いとされていますが、妊娠初期の初感染は10%程度の流産の危険性があり、初期~中期にかけては流産や早産の危険性に加え、発症率は低いものの先天性の奇形児の発症の危険性があります。

妊娠30週目以降は、性器ヘルペスによる早産や流産の危険性はほとんどありませんが、出産までに時間が無く治療が間に合わず性器ヘルペスを罹患したままで出産を行う為、ウイルスが増殖した産道を通過する経産道感染の危険性が非常に高く、新生児ヘルペスの発症率が高くなります。
新生児ヘルペスは、日本国内では1万人~2万人に1人と発症率自体は高くありませんが、現在の医療でも全発症数の20%~30%が死に至る上に重篤な後遺症の危険性も高い疾患です。

初感染の妊婦は、妊娠初期には抗ウイルス薬の軟膏による治療が行われますが、病変が広い場合には羊水への移行性を有するアシクロビルやバラシクロビルを静脈注射及び経口投与する事で、胎内感染の予防や外陰部病変の治療及びウイルス量が減少します。
アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬は、基本的に投与による有益性が危険性を上回る時のみ妊婦に投与されますが、抗ウイルス薬の副作用による先天性欠損症の発症率の上昇や流産の誘発、早産の誘発の危険性は無いとされています。

ヘルペスに感染しての分娩は帝王切開になることも

性器ヘルペスは、妊婦の場合には新生児ヘルペスへの感染を引き起こす自然分娩を避け、帝王切開で胎児を取り出します。
帝王切開は、子宮頸管や腟などの産道内にウイルスが増殖しているかを専門機関の検査結果で判断する必要がありますが、時間的な問題やガイドラインにより外陰部の病変の有無で判断する医療機関が大半です。

性器ヘルペス感染時の帝王切開は、外陰部の水疱や潰瘍などの病変の有無だけで無く、妊婦の再発及び発症の仕方で判断基準が大きく異なります。
帝王切開は、妊婦の初感染発症から1カ月以内の分娩の場合や再発及び初非初感染発症から1週間以内の分娩の場合には、経産道感染の危険性のある自然分娩を避けて行われるとされています。

新生児ヘルペスは、生後2日~1カ月程度で新生児に発症する疾患ですが、早期発見及び早期治療で予後の経過や重篤な後遺症の発症の危険性が大きく異なります。
その為、帝王切開による分娩後24時間以内かつアシクロビルなどの抗ウイルス薬を投与する前の新生児の眼や口、耳、鼻から検体を採取し、ウイルス抗原検出検査などの検査し、ヘルペスウイルスの有無を判断すると共に新生児を数日~1週間程度入院させ経過観察します。