ヘルペスと聞いて何を思い出すでしょうか。多くの方は疲労時に唇に出現するイボがヘルペスという認識をしているのではないでしょうか。
ヒトヘルペスウイルスと言われるウイルスにはたくさんの種類があります。
それぞれのウイルスによって感染する領域に特異性があります。
例えば口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1は口唇に、性器ヘルペスの原因になる単純ヘルペスウイルス2は性器周辺の粘膜に感染します。
一方、ヒトヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスはリンパ球に感染するなど、表皮や粘膜に限らないのもこのウイルス群の特徴です。

しかし、近年性器周囲のイボからウイルス遺伝子を採取したところ、一般に性器周辺に感染することが知られているヒトヘルペスウイルス2の遺伝子ではなかったという事例があります。
これは口唇ヘルペスの原因となるヒトヘルペスウイルス1による感染症であるということが明らかになると、世間はその事実に驚きました。
本来性器周辺では認められてこなかったタイプのウイルスが性器の粘膜にも感染するという事実と、性行為の多様化が新たな感染症を生み出したことが最も驚くべきことだったのです。

近年、異性間のみならず同性間でも性行為が行われ、その方法が多様化しています。
その一つに更新による性器の愛撫、フェラチオやクンニリングスなどのオーラルセックスがあります。
口唇に存在するウイルスが唾液を介して伝播されるだけでなく、もともと性感染症の病原体として知られていた細菌やウイルスが口唇や咽頭に感染する原因となりました。

本来いなかった場所に感染した病原体で起こした症状は非常に治療がしづらいのです。
医療者もよもや口唇ヘルペスを起こす単純ヘルペスウイルス1による感染だとは思わず、的外れな病原体を疑って治療を進めることになり、ウイルス遺伝子を検出できるようになるウイルスが非常に増殖した頃では症状が現れてからしばらく経っているということも珍しくは無いのです。
そのため、医師の問診にはきちんと答え、的外れな治療を患者さんと医師の双方で予防する手立てをしなくてはなりません。

口内や唇も決して完全に清潔であるわけではありません。
表皮にはブドウ球菌属の菌がたくさんいますし、口内は虫歯菌という言葉からも分かるようにたくさんの種類の菌が存在しています。
唾液で絶えず菌の働きが抑制されているために大抵は問題になりませんが、性器で繁殖すると唾液による抑制効果を得られないために重篤な症状を示しかねないため通常の性交よりも特異なのです。

口唇ヘルペス感染中でのオーラルセックスの注意点

口唇ヘルペスを引き起こすウイルスが性器にも感染することは述べたとおりですが、このような感染を防ぐためにはどのような注意をしてオーラルセックスを行えばいいのでしょうか。
男性器を口唇で愛撫する際の注意としては、通常の性行為同様にコンドームをつけて行うことです。
単純ヘルペスウイルス1は性器の粘膜に定着することでイボ状の結節を形成するのですが、口腔と性器に直接の接触を無くすることが出来れば感染リスクは抑えることが可能です。
ゴムによる口内に含む嫌悪感はあるかもしれませんが、これが現状最も安全にオーラルセックスを行う方法です。

女性器の口唇による愛撫の場合、コンドームの装着が出来ません。
そのため、完全な粘膜どうしの接触予防が不可能であるため、極力行わないことが重要です。
布程度を隔てるだけでは唾液による媒介を防止できないため避けるのがベターです。

口腔内の消毒によってウイルスを死滅させる、ということを考える方がいるかもしれませんが、現実的ではありません。
既に口唇ヘルペスを患っている場合、皮膚のイボにもウイルス粒子が存在しウイルスを排除したそばからウイルス粒子が飛び出し、感染を引き起こすのです。
そのため、粘膜どうしの接触を防ぐ、口唇ヘルペスを患っているとわかったらオーラルセックスをしないことが最も確実な防衛策であると言えます。